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【リレーエッセイ】「私の心棒」/2016年10月1日発行

更新日:2016/10/01

筆者

臨時放課後児童支援員 篠原佳美さん

「私の心棒」

 一緒になって6年という短い結婚生活であった。

 お見合いで出会ってすぐに結婚し、結婚生活が始まる。
嫁としてちゃんとしないといけないという変な気負いもあり、最初の3か月
は思ったことも言えず、心の中が重たくなっていったことを覚えている。
 主人が冗談で言った「お肉は食べない」という言葉を真に受けて、全ての料
理にお肉を使わずに作っていたが、我慢出来ずに大晦日の日に「すき焼きが食べたい」と言ったら、「いいよ~」と、2人ですき焼き鍋とお肉を買って来て食べた事があった。
 その時、初めて冗談だったことや、「真に受けてたの?」と逆に聞かれ、他愛もない事すら聞けずに、やらなければいけないと、自分で自分を抑圧していたことに気付かされた。
そして、主人も「なぜお肉が出ないんだろう?」という疑問を、慣れない料
理を一生懸命作っている私に聞けずにいたことも解った。

夫婦生活は2人の共同作業であり、どちらかが我慢するものでもないし、ど
ちらかだけが悪いということもないと、私は思う。
その1件以来、私も主人には思った事を何でも言う様になったし、主人も私
に聞いてくることが増え、私たちなりの家庭を作り上げていくことが出来た。

 病気が見つかり、病院での1年間の闘病生活の末、主人は旅立っていったが、
私も1年間病院に泊まり込みで看病させてもらった。
家を空け、ずっと側にいられることが出来たのは、私が結婚生活の中で苦労と感じていたことのお陰である。
なかなか子どもが出来ず不妊治療を続けていたことを、辛いと感じていたが、子どもがいれば病院にずっと泊まり込みなんて出来なかったし、主人のご両親との同居生活で家の中でも気を使っていたことを、しんどいなと感じる時もあったが、ご両親と同居させてもらっていたからこそ、安心して家を空けることが出来たからだ。

この世で一番大事な人の、一番大事な時を一緒に支え合い、頑張ることが出
来たのは、その苦労と感じることがあったからこそである。
今の自分に必要な縁しか来ないと学び、全てが自分にとってメリットである
と教えてもらった。
 
 主人の携帯の写真フォルダには、【女傑】というフォルダが残されていた。
開けてみると、病院の簡易ベットで寝ている私の寝顔が何十枚も入っていた。
 病気の痛みや、不安などから眠れない夜が何度あったことだろう。その度に、私の寝顔を見て安心してくれていたのなら、傍にいれた事が本当にありがたく安心してもらえる私だったことが嬉しかった。

 姿がなくても、私と主人はいつも一緒である。
最後まで「笑っていて」と言ってくれた主人は、私の心の棒、心棒になっているからだ。
 これからも、笑顔溢れる前向きで楽しい人生を、私は強い心棒と共に歩んでいく。




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