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【リレーエッセイ】「今、新しい命を産み出す女性」は私の同志/2015年11月1日発行

更新日:2015/11/01

今回のエッセイは、高知県立大学看護学部2回生 田邉佳香さんからのバトンです♪

筆者

アニタ助産院 助産師・竹内喜美恵さん

「今、新しい命を産み出す女性」は私の同志

 私は今、高知市で助産院を開業している者です。開業して18年目になります。ほんとにアッという間の18年でした。
開業以来ずっと、胸にある事、心に留めている事、念じ続けている事、夢み続けている事などなどが多々あります(胸を塞ぎ続けている事もまた多々ありますが・・・)。その中のひとつに、「産む女性と私の関係はどうあるべきか。」という課題があります。今日はこの課題についての18年を語ろう(?)と思います。こんな話に少しだけお付き合い下さい。

<始めの頃>
 開業当初は、実を言うと私自身が「助産師であるのならば、こうしたいああしたい、こうでありたいああでありたい」と思う事が山ほどあって、結構つんのめり気味で私の希望優先(?)みたいなところがありました。ごめんね皆さん。ただ、今振り返れば、自分がどうしてそうしたいかの説明にはたくさんの時間を使っていました。それで、私のつたない説明の中に、ご自分自身の願いを重ね合わせられた方々が、ここアニタ助産院での出産を決意して下さったのだと思います。それと、それなりの金額を頂戴するのであるからそれに見合った内容でなければ・・・という気負いも私にありました。まぁ当初はなかなかの私流考えの一方的主導(?)型の雰囲気満々でした。
 年月を経るうちに、私ののぼせが少し落ち着くと、色々関係性につぶやきを感じ始めるようにもなりました。現実として今更ながら実感したのは、「出産は本人の身体で始まって本人の身体で終わる事柄、本人の意志と努力と、何よりも明るく元気な前向きの心なくして成し遂げられる事ではない。」という事実でした。
助産院で出産するという事は医師がいない所で出産するという事です。それは、医師が要らないという事では決してなく、「医師の用事がないくらいの安産を致しましょう。」と母となる方と私が約束し、内容を満たし、実現への努力を共にする・・・という事です。その事実を実感する日々の中で、母となる方々との対応の内容が、半ば無意識のうちに、いつの間にか少しづつ修正がなされてきたように思います。

<それから>
 いつしか私は私自身の位置を、一個人からの「自分の新しい家族の誕生を安全に成し遂げるために、自分にはなにが出来るかの教えを請いたい。そして自分では力の届かない部分を支えて欲しい。」との要請を受け全身全霊でもってその要請に応える人・・・という風に置くようになりました。
 こういう気持ちになったのには、ある女性との出会いがありました。その方はお二人目の出産についてアニタを訪れて来られました。その時ご本人が語られた一度目の出産の有り様が、色々ご本人の思いに反し、心にそぐわず、後々色々思い直しはんすうしてみても事態が胸に落ちずにおられました。それは誰かに不満があるとか文句があるとかそういう事ではなく、ただただ「私は自分で自分の子を産む力もないのか」という深い悲しみでした。聞いている私も胸が衝かれる思いがしました。その方は私に「この子の出産にあたって、私になにが出来るか教えて下さい。そしてわたしの頑張りを見届けてください。」と言われました。私は「全力でお手伝い致します。」と申し上げました。この方との出会い以後、私は自分の取るべき位置が見えてきたように思います。

<今>
 ですが、今はこれとは少し違った気持です。
今は、「あの世からこの世に降り立つ新しい魂達がこの地上にナイスランディング出来るよう、その魂が全身全霊を預け切っているお母さんと共に力を尽くす。」これしかない、これに尽きる、と思い込んでいる日々です。と、言ってみて気が付くのですが、これって極々当たり前の事ですよね。今頃言ってみたりして・・・お恥ずかしい。
 あの世からお母さんのおなかに降り立ち、十月十日の時間をかけて育ち、太古からの遺伝子の約束を果たすべく自ら陣痛を起こし、産道を潜りこの世に降り立つ命を、魂ごとそっと受け止め、体内は激変ででんぐり返しているであろう時々刻々を抱きしめ続け、この世を穏やかに受け入れて貰う条件を整えるのが私の務めと心得ます。
 妊娠中は喜びをもって過ごし、出産は共にある事を伝え続け、穏やかに健やかにを念頭にこの世に受け止める。これを成就させるお手伝いが私の仕事です。

 そういう事で、アニタで出産されるお母さんとわたくしめは、新しい魂の健やかな降り立ちのために共にそれぞれの責務を満たそうと努力する同志です。新しい命とどんな風に出会いたいか一緒に考える同志です。
 その中を貫くたったひとつの条件は、「妊娠の日々こそ、明るく楽しく幸せに・・・」です。赤ちゃんは感じてます、母の日々の喜怒哀楽を・・・。

楽しんで下さい、心から。まだ身一つの一日一日を・・・。




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