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【リレーエッセイ】「保育士頑張れ!」/2016年5月1日発行

更新日:2016/05/01

筆者

あけぼのクリニック院長 石本浩市さん

「保育士頑張れ!」

 「保育園落ちた日本死ね!!!」「なんだよ日本。1億総活躍じゃね~のかよ」のブログで待機児童問題が改めて脚光を浴びている。保育園需要の増加は核家族化、共働き世帯の増加、母子家庭の増加などが原因である。政府も急遽対応を迫られて保育園の増設を打ち出したものの、肝心の保育士が足りない。その主な原因は保育士の待遇が悪いためらしい。他の職業と比べて給与が10万円も低いという。                 

 私は生まれ育った南国市田村に2001年に小児科クリニックを開設した。それまでは東京の大学病院で小児科医として、がんや血液疾患の子どもの診療に当たってきた。医師になった1970年代後半は小児がんは治すことの難しい時代であったが、幸いにも80年代になって急速に治療が進歩して現在ではその約80%が治癒するようになった。当時治療にかかわった多くの子どもたちもすでに社会人になっている。彼らは口をそろえて「色んな人の世話になったから、人の役に立つ仕事がしたい」と言う。看護師、ソシャルワーカー、心理士、医師などの医療職に憧れ、実際にその夢を実現している人が少なくない。子どもにかかわる職業も人気で、保育士になっている人もいる。私が関わった患者の中にも2人保育士になった女性がいる。それぞれ3年前と2年前に結婚し、その披露宴に招待してもらった。治療にあたっていた20年以上前には想像もできなかったことである。同じように子供を相手にする仕事仲間として、彼女たちと子どもについて語りあえる幸せをかみしめている。
 
 小児科医になって40年、故郷に帰って子どもたちを診るようになってから15年の歳月が経った。大学病院と田舎の小児科医とのギャップに戸惑うこともあったが、自分が通った保育園や小学校の後輩たちが育ってゆくのを見れることは幸せなことだと思っている。そんな日々の診療の中でとりわけ心配なのは厳しい環境に置かれている子どもたちのことである。昨今子どもの虐待についての報道に接することが多いが、それは氷山の一角であり、水面下で大変な目にあっている子どもが少なくないことを見せつけられてきた。一見豊かに見えるこの日本において、まともに食事を与えられず、同じ服をずっと着せられ、風呂にも入れてもらえない子供たちがいる。以前は親のことを非難する気持ちが強かったが、経験を重ねるうちにその親たちも子供の頃、辛い養育環境に置かれていたことを知らされた。核家族化して子育てが孤立しがちな現在、ごく普通の親でも追い詰められ虐待に至ることもある。

 虐待は外からはなかなか分かりにくいため、子供たちと接する機会の多いわれわれ小児科医、保育士、学校の教師などが敏感でなければならない。共働きや母子家庭の多い高知県では、とりわけ保育士の果たす役割は大きい。冒頭のブログに続いて少し上品に「保育士頑張れ!あなたたちが日本を救う」とフォローしたい。




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